2005年9月のTalk-Delivery


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      9月4日(Sun) あの夏の日
涼しさ求めて幽霊のごとく「ぬぼー。」と電車に乗り込もうとした時である。 入れ違いで降りて来た人々の中に、幼い頃の記憶を呼び起こす女性の顔があった。 「ん?」顔をしかと再確認したかったのだが、急ぎ足で去って行ってしまったので 不可能であった。が、あの頃の面影のまま、そこには田宮さんがいた。
間違いない。小学校の時同じクラスだった女子である。
それぞれ別の『仲良しグループ』に所属していたため、いつも一緒に遊んだ覚えは ないただのクラスメートである。が、名前を忘れてしまっていても不思議ではない 彼女を「あ。」と鮮明に思い出せるのには理由があるわけである。
それは若干8才、2年生の夏のことであった。 朝のホームルームにて担任教師が、田宮さんが本日休みであることを告げ、 なぜならば・・・という報告をし始めた。なんでも、昨夜遅く 血をごぼー、と吐いた。ゆえに欠席。とのこと。
クラスは大騒ぎであった。 子供ってもんは、いつだって刺激が欲しくてセンセーショナルな話題を求めている生き物である。 誰ぞやが『おもらし』したぐらいで、はたまた花壇のひまわりをたった1本折ってしまった程度で、 その容疑者的存在をターゲットに「やーいやーい★」といじる習性も持つ。 どうでもいいような事で熱くなれるお子達にとって、
深夜未明に血を吐く という田宮さんの行為は、
まさに2年4組の特ダネ大スクープであった。
「実は重病なのでは!?」「救急車に乗るなんて、一歩進んでる!!」等など、 女子の男子も大いに盛り上がった。
更に、血を吐いた件だけでこんなにも騒がれたのに、 原因が少しばかり『まぬけ』だったため、彼女は後々ひやかしの刑に処されることとなる。
実は夜中に鼻血を噴出させ、ティッシュによる止血が面倒だったのか、両親への緊急告知がうっとうしかったのか、 流れ落ちて来るがままに血をごくごくと飲んでいたらしい。
で、人間の胃袋というものは、血液が流れ込むと すぐさま拒絶反応を示し、吐き出すようプログラムされている。 だからして「けぽー。」に至ったわけである。
笑われ、バカにされまくり、田宮さんは泣いていた。わたくしは可哀相に思ったが 「笑われてもしょうがないよなぁ。だって面白いし・・・。」と残酷にも多少楽しんでいる節があった。
ところが、これが他人事ではなくなる事件が起こるのである。
同時期、飼育係だったちびKatzla(平賀さん)は、教室に設置されていた水槽を見事ひっくり返し、 皆で可愛がっていたおたまじゃくしを全滅させる。
という罪を犯したのである。
あの日、水を取り替えて差し上げようと、水槽を「よっこらせ。」と持ち上げ、外へ運び出そうと したのだが、わたくしは何も障害物のない床ですっ転び、ど派手に『水』及び『おたま達』をぶちまけた。
その日からわたくしは田宮さんの後を追う形で『次期処刑者』として扱われることとなる。
「生き物になんてことを!!」「奴には血も涙もない!!」と一日中叱咤され、 帰り道、犬を撫でていようものならば「お前が犬なんか可愛がるな!!」と罵倒され、泣きじゃくりながら 家まで歩いたものだ。わざとじゃないよ。わたくしだって愛していたさ、『おたま達』を・・・。
さて、そんなわけで我々二人はあの夏、
『吐血の田宮』&『おたま殺しの平賀』 という異名をとったああ、哀れコンビだったわけである。
田宮さん、お元気か?覚えておいでか?あの過酷な日々を。辛かったね。
駅のホームで君らしき人を見たよ。お互い強くたくましく生きてゆこうね。
感慨深かった夏の終り。♪ちゃら〜ん♪





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